週末シンデレラ
宴会場へ戻ると、みんな自由に入り乱れていて、始めに座っていた席は知らない営業部の人に占領されていた。
女性社員は部屋へ戻った人もいるのか、人数が少なくなっている。係長は、また元の席で飲み直していた。
「詩織、どこに行ってたの?」
わたしが入り口で立ち尽くしていると、美穂がやって来た。まだ、経理課の先輩たちと飲んでいたらしい。
「あ……うん、じつは……」
「……待って、人が少ないところで話そうよ」
わたしの声が沈んでいたからか、美穂が別の場所へと促してくれる。部屋はほかの女性社員とも一緒なので、近くの浜辺に行った。
「そんなことがあったんだ……。宴会が盛り上がりすぎて、誰がいなくなったとか全然わからなかったなぁ」
すべて話し終えると、美穂は驚いていた。わたしは、とりあえず大きく騒がれていないことにホッとする。
「でも、武田さんにバレちゃったんだよね……それが気になる……」
「あー……やっかいな人にバレたよね。さっきはなにも言ってなかったけど……」
係長と付き合っている、と噂を流されるのか、それとも上川くんとの噂を流されるのか……。二股なんて噂されたら、会社にいられなくなりそうだ。
せめて、係長だけでも噂を否定してくれたらいい……。
しばらく夜の海を眺めたあと、わたしたちは部屋へ戻った。