週末シンデレラ


次の日は、船で帰るだけでなにも予定がなかった。

きっと前日の宴会で、みんなが二日酔いになると考えて、予定が組み立てられていたのだろう。

「じゃあ、詩織……わたし、バスで帰るから。また明日」
「うん、明日」

お昼前に港へ着き、わたしは電車なので、その場で美穂と別れた。

明日は月曜日で、通常通りに仕事がある。土日で社員旅行というのは、かなりハードだ。

係長とは船内で席が遠かったので、なにも話をしていない。

武田さんは部長代理の近くにはおらず、友達と座っていたので、もしかしたらフラれたのではないかと思う。

ついでに、わたしの噂話もしていたのかな……。

そう考えると気が重くなる。ため息をつきながら、駅へ向かっていると。

「加藤さんっ」
「か、上川くん……」

上川くんに呼び止められた。

……今、一番会いたくなかったかもしれない。

だけど、無視をするわけにもいかず、少し距離を取って足を止めた。


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