週末シンデレラ


「これから昼飯でも、一緒に行きませんか?」

昨日、微妙な別れ方をしたから、わたしを気遣ってくれているのかもしれない。それでも、一緒にご飯なんていう気分にはなれない。

「ごめん……わたし、家でゆっくりしたいから」
「そうですか、残念です。……また今度、お誘いしますね」

上川くんはペコリと頭をさげると、まだ港でいる営業部の先輩たちのほうへ駆けて行った。

すんなり引き下がってくれたことにホッとする。しかし、彼を見送っていると、港から歩いてくる人影に、身体が固まった。

「か、係長……」

係長も電車だった。こちらへ向かって、歩いてきている。きっと、わたしと上川くんが話していたところは見ていたはずだ。

「……仲がいいんだな。それに、やっぱり付き合っているそうじゃないか」

わたしの横を通り過ぎるとき、こちらをチラリと見ながら言った。

その瞳には失望の色がにじんでいる。……武田さんが、すでになにか言ったのかもしれない。

「ち、違います。なんで信じてくれないんですか!」

駅へ向かう係長の背中に問いかけるが、彼は足を止めてくれない。

……昨日から、意地悪になった気がする……。

上川くんと付き合っていると勘違いして、わたしに失望しているとは思う。でも、それなら無視してくれたらいいのに、こうしてつっかかってくる。


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