週末シンデレラ
「痛っ……」
自分の不注意でもあるので、文句も言えないし、言う度胸もない。
上半身を起こすと、ひじの辺りに痛みが走った。見ると、擦り剥いて、赤い血がにじんでいる。
「大丈夫か!?」
「か……係長……っ」
地面に座り込んでいたわたしに、係長が駆け寄って来てくれる。怪我を見ると、キッと眉間にしわを寄せた。
「ちょっと、言ってくる」
「い、いいんです! わたしもぼうっとしていたので」
係長が、今にも団体客へ殴りにかかりそうな様子だったので、わたしは慌てて止めた。
わたしのために怒ってくれているのだろうか。そう思うと嬉しいけれど、また係長の気持ちがわからなくなって、戸惑ってしまう。
「とりあえず、ここに座って。消毒したほうがいい」
係長はわたしを駅のベンチへ座らせると、近くにある小さな売店で消毒薬と絆創膏を買ってきてくれた。
「すみません……。放っておいてください、なんて言っておきながら、ご迷惑を……」
「怪我の手当ては、迷惑じゃない」
係長は傷口を綺麗に消毒したあと、絆創膏を貼ってくれた。それから、わたしの足元を見つめ、フッと息をついた。