週末シンデレラ
「強いて言えば、きみに……心をかき乱されて迷惑している」
「え……?」
「何度もきみを忘れようとしているのに、忘れられないんだ……。気分転換に街を歩いても、かわいいものを見るときみの顔が浮かぶし、仕事をしていてもきみを見てしまう。なにをしていても、きみのことばかリ考えてしまう」
「係長……」
「今も……放っておいてくれと言われたのに……放っておけなかった」
「……」
それはわたしも同じだ。なにをしていても係長が気になるし、なにを言われてもまだ離れたくないと思っている。
ホームに、電車が到着するアナウンスが流れた。係長は荷物を持って、腰をあげる。
「上川くんと一緒にいるところを見て、腹が立ったのは……嫉妬だ。悪かった」
「嫉妬……」
胸の奥がジワリと熱くなった。
べつに「好きだ」と言われているわけでもないし、その前から何度も拒否されているのに、ただそれだけで嬉しさが込み上げてくる。
「そのサンダルがなくても、きみと“カオリさん”は同じだと……わかっているから」
わたしの気持ちは、きっと伝わっている。そして、ちゃんと考えてくれているのだと思う。……あとは、係長自身の問題だ。
電車へ乗り込む背中を見つめながら、どうか過去を乗り越えてくれますように、と願った。