週末シンデレラ
六章:永遠のシンデレラ
翌日の昼休み。美穂と一緒に、今日は食堂ではなくベーカリーショップへ来ていた。
「あー……やっぱり旅行のあとは、一日くらい休みがほしいよね」
入り口近くの席に着き、向かいに座った美穂が、パニーニを頬張りながらぼやく。わたしもコーヒーカップを口に運びながら大きくうなずいた。
「ホントだよね。でも、武田さんがちゃんと出勤したのは意外だったなぁ」
みんな、同じように疲れているのだから出勤することは当たり前。でも、仕事は人任せにする武田さんのことだから、休むかと思っていた。
なのに、わたしよりも早く出勤していたので驚きだった。
「そういえば、係長は変わりないね。詩織にも普通に話しかけていたし」
「うん……」
係長とは午前中に、仕事のことで会話をした。でも、態度も口調も、旅行へ行く前となにも変わらない。
それどころか、背すじを伸ばしてキーボードを打つ姿が、まるで“カオリ”と出会う前みたいだと思った。
それがいいことなのか、悪いことなのかわからない。ただ、なかったことにされているのなら、寂しいと思う。
「ふたりともお似合いなのに、うまくいかないよねぇ……」
美穂はもどかしそうにため息をつき、テーブルに頬杖をついた。