週末シンデレラ
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水曜日。名刺を注文しにやって来た営業部の人に、「上川のこと、よろしく」と言われた。もちろん否定したけど、まだまだ噂は流れているのだと思う。
とりあえず今のところ、上川くんと接する機会がないことは救いかも……。
仕事の会話しかしないとはいえ、一緒にいるとそれだけで注目される。上川くんもわたしに気がある素振りを見せるから、そこも心配だった。
「詩織、今日は水口さんの代わりに電話当番やるんだっけ?」
昼休みに入り、美穂が声をかけてきた。水口さんは総務課の一年上の先輩。今日は電話当番だったけれど、風邪で休んでいる。
朝、休みの電話を受けたのがわたしで、課長に報告した際に電話当番も引き受けた。
「詩織、ご飯はどうするの? なにか買ってこようか?」
「ううん、いい」
出勤してから電話当番を引き受けたので、お昼ご飯は用意していない。
けれど、残業をしていてお腹が空いたときのために、いつもデスクの引き出しにカップラーメンをしのばせていた。美穂もそれを知っているので、あまり心配してこない。
「そう? じゃあ、お昼へ行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
美穂を見送ると、給湯室でカップラーメンにお湯を入れ、すぐに事務室へ戻る。
自席へ着こうと武田さんのデスクの前を通ったとき、彼女がスマートフォンを忘れていることに気がついた。