週末シンデレラ
一時間の休憩くらいスマホがなくても平気だと思うけど、武田さんなら取りに戻ってくるかなぁ……。
そんなことを思いながら、三分経過するのを待っていると、わたしと同じく電話当番をしていた監理部の人が腰をあげた。
スマートフォンに私用の電話がかかってきたらしく、わたしに「ごめん」と手で合図をしながら事務室を出て行く。
出入り口のドアを閉め忘れるくらいだから、よほど焦っているのかもしれない。
「武田さんに比べたら、電話当番の留守を任されるくらいかわいいものだよ……っと。戻ってくるかもしれないんだった」
慌てて口を塞ぎ、カップラーメンの蓋を開ける。すると。
「武田さんが……どうかしたんですか?」
急に背後から声をかけられた。事務室には誰もいないと思っていたので、驚いて肩がビクリと跳ねる。
声のほうへ振り返ると、上川くんが小首をかしげて立っていた。
「か、上川くん……! もう、驚かさないでよ……」
武田さんじゃなかったことに胸を撫で下ろす。
「加藤さん、今日も電話当番なんですか?」
「うん、休んだ人の代わりに」
質問に答えながら、上川くんとふたりきりでいるところを、誰かに見られるのはまずいと思う。しかも、武田さんが戻ってくるかもしれない状況だ。