週末シンデレラ
「上川くんはどうしたの? 総務課になにか用事?」
早く帰ってもらおうとして、自然と急かすような口調になる。上川くんはわたしの考えに気づいたらしく、大袈裟に肩をすくめた。
「そんなに追い払おうとしなくてもいいじゃないですか、せっかく加藤さんに会いに来たのに。もしかして、みんなに誤解されていることを気にしてるんですか?」
「……う、うん……。上川くんもごめんね、迷惑かけちゃって」
武田さんがわたしと係長とのことをよく思っていないからこそ、こんなにも噂が流れてしまったと思う。わたしが謝ると、上川くんは首を振った。
「どうして加藤さんが謝るんですか。宴会の最中に連れ出したのは、俺ですよ。それに、俺は加藤さんと噂になって嬉しいですけどね」
「また冗談を……」
「本気ですよ。俺、加藤さんが好きだから」
「へっ!? わたしを?」
思ってもみない告白に、自分を指差して聞き返す。目を瞬かせるわたしがおかしかったのか、上川くんはクスリと笑った。
「加藤さん、本当に鈍感ですね。俺、結構アピールしてたつもりだったんですけど、全然気づいてなかったなんて」
「だ、だって……どうして? わたし、なにもしてないけど……」
気がついたら仲良くなっていたけど、上川くんは誰にでも人懐っこいので、まさか本当に好かれているとは考えたことがなかった。