週末シンデレラ
……上川くんと付き合うと、どうなるだろう。優しい言葉をくれる上川くんだから、彼女として不安はないかもしれない。それに楽しいとも思う。でも……。
「……ごめんなさい。わたしには……好きな人がいるから」
不器用だけど、誠実で、いつもわたしを気にかけてくれる優しい人……都筑係長のそばでいたい。心からそう思う。
「好きな人って……都筑係長ですか?」
「うん……」
「……わかりました。じゃあ、俺はこれで……」
そう言って、上川くんは出入り口のほうへ向く。わたしも彼を見送ろうと、そちらを見ると。
「た、武田さん……!」
スマホを取りに戻ってきたのか、武田さんが立っていた。
上川くんの話に集中していたうえに、ドアも監理部の人が出て行ったまま開けっ放しになっていたので、武田さんが事務室に入ってきていたことに、まったく気づかなかった。
ふたりでいるところを見られるなんて、タイミングが悪い。
「お昼休みにもコソコソと会ってるなんて、やっぱり噂は本当だったのね」
武田さんはニヤリと口の端をあげ、何度もうなずいている。
「ち、ちが……」
「違いますよ、俺がただ……」
わたしと上川くんが、慌てて否定しようとしたとき、入り口に人影が見えた。