週末シンデレラ
「まぁ、詩織は紹介とか合コンとかに慣れてないもんね。あ、仕事とは違うんだから、少しはオシャレしていくのよ」
「わ、わかった」
女子のお手本とも言えそうな美穂にビシッと注意され、わたしは肩をすくめながらうなずいた。
美穂はどんな時でもメイクがバッチリきまっている。大きな瞳に長いまつげ、ふっくらとした唇にはツヤツヤのグロスを塗り、胸元まで伸びた栗色の髪は可愛いシュシュでまとめ、指の爪先まできちんと手入れをしている。
それに比べてわたしは……。
スリープ状態になったスマートフォンにぼんやりと映り込むのは、黒髪のショートボブに黒縁眼鏡をかけた、化粧っ気のない地味な自分。
好きで地味にしているわけではないし、恋を諦めているわけでもない。ただ、女性の先輩方が怖くて派手にできないだけだった。
「どんな人か聞いた?」
スマホに映る自分をじっと見つめていたわたしに、美穂が覗き込むようにしてたずねてきた。
「あ、うん。六歳上の、真面目で誠実な人なんだって」
「へぇ、いいんじゃないの。詩織はウブだから、年上の人がいいかもしれないね」
たしかに、年下よりは甘えられるし、引っ張っていってもらえそうだと思う。
素敵な人だといいなぁ。
食べ終えたお弁当箱を片づけながら、美穂と一緒にどんな人だろうかと想像する。緊張はやっぱりあるけれど、それ以上に新しいなにかが始まるようでわくわくした。