週末シンデレラ


「うん……ちょっとは女っぽくなったかな」

係長はわたしがスッピンでも、どんな服装をしていても気にしないと思う。きっと、そのままのわたしがいいと言ってくれるはず。

でも、わたしがなにかしないと落ち着かなかった。

係長のために……好きな人のために綺麗になりたい。みんな、そんな風に思ってメイクをしているのではないかと思った。

「すまない。遅くなった」

待ち合わせの時間から二十分過ぎたころ、駅の噴水前に係長が現れた。走って来てくれたのか、息があがっている。

「気にしないでください。お疲れさまでした」
「ああ、ありがとう……あれ?」
「な……なんですか?」

係長が身体を屈め、顔を覗き込んできた。あと二十センチで触れてしまいそうな距離に、思わず息を止めてしまう。

「会社で見たときと、少し違う……外で見るからかな、色っぽい」
「そうですか?」

恥ずかしくてとぼけながらも、心の中でガッツポーズをしていた。

「あ……俺は、なにを言っているだろうな……。ご、ご飯を食べに行こう」

係長は耳を赤く染めると、ご飯屋さんへ案内してくれた。


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