週末シンデレラ


気を抜くとすぐにゆるんでしまう頬を引き締め、仕事の準備をしていると、経理課の人がやってきた。

「加藤さん、上川くんにこのレシート返しておいてくれない? 経費の請求書と混じってたみたいなの」

そう言って、コンビニのレシートを一枚差し出される。

「わ……わたしから返すんですか?」
「上川くんと付き合ってるんだよね? 会うときのついでに、返しておいてもらおうと思ったんだけど……ダメかな」
「ダメというか、わたしたち付き合ってなくて……」

わたしが係長と付き合っていても、周りからは上川くんと付き合っていると思われている。その違いがもどかしい。

もう武田さんは怖くないし、間違った噂が流れているなら、本当のことをみんなに知られるほうがいい。だけど、係長には迷惑かもしれない……。

そんなことを思いながら、噂を否定していると。

「加藤さん、今週末……空いているかな?」
「えっ!?」

係長が事務室に響き渡る声で、わたしの予定を聞いてきた。


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