週末シンデレラ
あまりにも突然の誘いに、わたしは口を開けたまま固まってしまい、周りの人たちも何事かとざわつき始めた。
「なにも予定がなければ、どこか一緒にでかけよう」
「あ、は……はい、大丈夫です! けど……な、なんで……?」
なんで、みんなの前でデートに誘ってくるの?
そうたずねたかったけれど、動揺してうまく言葉が続かない。
「なんで……って、社内恋愛が禁止なわけじゃないのに、堂々と彼女をデートに誘っちゃいけないのか?」
事務室のみんなが一斉に「彼女!?」と騒ぎ始める。係長は涼しい顔のままわたしの横まで歩いてくると、そっと肩を抱き寄せた。
「間違った噂が流れているけど、加藤さんは俺の彼女だから」
係長の一言で、事務室にどよめきが起こる。隣にいた武田さんは身体を小さくしていて、なにもかも知っている美穂は楽しそうに笑っていた。
わたしはただアタフタするばかりで、なにがなにやら頭がついていかない。
「加藤さんの彼氏って、上川くんじゃなかったの?」
「ていうか、係長ってあんなに堂々と彼女とか言っちゃう人なんだ」
みんながざわざわと騒ぎだす。そんななか、係長がこっそりと耳打ちをしてきた。