週末シンデレラ


それから三十分ほど車を走らせて着いたのは、昨年できたばかりの観光スポットだった。

空まで届きそうな電波塔の近くには、ファッションのお店や雑貨店などが入った大きな商業施設もある。

土曜日で気候もいいから、どこを歩いていても人が多い。

「うわー……街がミニチュアに見える。なんだか、自分が巨人になったみたいですね」

電波塔の展望デッキで景色を楽しんだあと、さらにその上にあるガラス張りの回廊を歩いていた。

わたしがいちいち感動していると、係長がクスリと笑った。

「加藤さんらしい感想だな」
「そうですか? あ、あそこが最高到達点みたいですよ」

わたしが目指す場所を指差し、歩調を速めようとすると、係長に手を取られた。

「か、係長?」
「きみはよく転ぶから」
「そ、そうでした」
「……というのは口実で、ただ手を繋ぎたいだけなんだ」
「わ……わたしもっ……」

「わたしも繋ぎたかったです」と言いたいのに、ドキドキしてうまく言葉にできない。照れくさくなって、うつむきながら手を握り返した。


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