週末シンデレラ


電波塔から出ると、お昼ご飯を食べ、商業施設を見て回ることにした。目的もなくブラブラと歩いていると、係長がふいに足を止めた。

「あのワンピース、加藤さんに似合いそうだ」

係長が見ているのは、目の前のお店に飾られている小花柄のワンピースだった。

丸襟が上品で、ウエストラインは絞られていてスタイルもよく見えそう。

「かわいいですね。係長がそう言ってくれるなら、試着してみようかな」
「ああ、着てみてくれ」

わたしは係長に勧められるがまま、試着をしてみることにした。

色使いが鮮やかなワンピースは、自分では似合わないかと思ったけれど、サイズはピッタリで、思ったよりも似合ったことに驚いた。

「やっぱりよく似合う」
「ありがとうございます。でも係長って、自分が似合うものはわからないのに、他の人が似合うものはわかるんですね」
「他の人じゃなくて、加藤さんに似合うものだからわかるんだ」
「えっ……」
「ほら、着替えておいで。次はその服に合う靴を探しに行こう」
「あ、は……はいっ」

わたしは試着室のカーテンを閉めると、ひとりで頬を熱くした。

今日の係長……お、おかしくない!? “カオリ”のときもこんな感じだったっけ? でも、それ以上に甘い言葉が多い気がする……!

そのおかげで、わたしの心臓はさっきからうるさいほど音を立てている。

まだ火照りが残る顔で試着室から出ると、係長は店員に在庫を確認して、同じものをすでに買っておいてくれていた。

「あ、あの……お金を……」
「俺がしたくてしているんだから、いいよ」

そう言って、結局ワンピースに合わせたパンプスまで買ってくれた。


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