週末シンデレラ
「今度はどこか行きたいところ、あるかな?」
係長はなにも感じていないのか、デートのときと変わらない様子でたずねてくるので、わたしも必死に平静を装う。
「んー……そうですね。社員旅行で行った島も、もう一度ゆっくり回ってみたいですし、冬になるので温泉もいいなぁ……なんて思います」
「ああ、温泉なら旅館で一泊するのもいいな。美味しいご飯も食べられるよ」
「もー……係長、わたしが食べることばっかり考えてると思って」
笑いながら、係長の肩を軽く叩く。しかし、ノリで触れてしまったことに後悔した。
か、係長の肩……筋肉があってしっかりしてる……!
“カオリ”としてキスをしたとき、頭から抱きすくめられた。
そのときは緊張と、バレるんじゃないかという焦りがあったので、あまりわからなかったけど、かなり引き締まった身体をしているみたいだ。
「あ……すみません、つい……」
小さく謝りながら手を引っ込めた。係長の男の部分を感じ、胸が張り裂けそうなほど高鳴る。係長は黙り込んだまま、なぜかじっとわたしを見ていた。
「あ……わっ、わたし、そろそろ……」
テレビの音なんて入ってこないほど緊張してしまい、居ても立ってもいられなくなって腰をあげようとすると、係長に手を掴まれた。