週末シンデレラ
「んっ……」
翌朝。カーテンから漏れる朝日で目を覚ました。見慣れない天井に、ふかふかの真っ白なベッド。そして隣には都筑係長……改め、征一郎さんがいる。
……かわいい寝顔。
端正な顔立ちで、黙っているとどこか冷たささえ漂うのに、ノンフレームの眼鏡を外して眠っている姿は無防備そのもの。
ついに、征一郎さんと……繋がったんだ。
寝返りをうつと、腰に鈍い痛みが走る。昨夜の余韻だと思うと、幸せで頬がゆるんだ。
「朝ご飯でも作ろうかな……」
ひとりの休日は朝ご飯を作るなんて億劫で、なにも食べないことだってある。
なのに、征一郎さんと一緒に食べると思うと、サラダや卵やハムが揃った朝食を作りたくて仕方がない。
まだ隣で眠っている征一郎さんを起こさないように、そろりそろりとベッドを抜け出そうとしていると……。
「どこへ行くんだ?」
「きゃっ……」
手首を掴まれ、肩がビクリと跳ねる。振り返ると、征一郎さんが目をこすりながら、上半身を起こしていた。
美しい胸板が露わになり、朝日に眩しく輝いている。一晩中見ていたはずなのに、また胸がドキドキと高鳴りだし、頬が熱くなるのを感じた。
「あ、朝ご飯を作ろうと思いまして……」
「朝ご飯はいい。あとで一緒に作ろう。それより……」
「あっ……」
グイと強く腕を引き寄せられ、征一郎さんの胸の中に閉じ込められる。
「眼鏡がないと……よく見えないんだ」
「……は、はぁ……」
「だから、この腕から出ていかないでくれ」
そう言いながら、視線を逸らした征一郎さんの耳は赤く染まっていた。
「……はいっ」
わたしは大きくうなずくと、彼の腕に抱かれ、もう一度幸せな眠りについたのだった。
【完】
*最後までお付き合いいただき、ありがとうございました*