週末シンデレラ


「せ、征一郎さん?」

フライパンを持ったまま、近くにいる彼を見上げると、わたしの髪に顔を近づけ、鼻をスンスンと鳴らした。

「同じ香りがする……」

征一郎さんの声がすぐそばに聞こえる。耳元で響く低い声に、頭の中が甘く蕩けだしそうになった。

「変な感じだな、きみから……俺と同じ香りがするなんて」

なおも鼻を近づけて深く香りを嗅ぐ。嬉しそうに呟いて、微かに笑う気配があった。たしかに、征一郎さんからもわたしと同じ香りがする。

シャンプーやボディソープを借りたので、当たり前と言えば当たり前なんだだけど……。

「そ、そうですね」

相槌をうちながらも、できれば今、そんなことをしないでほしいと思う。

ただでさえお風呂でのぼせそうになり、さらにお風呂あがりの征一郎さんを見て心臓が張り裂けそうだったのに、これ以上ドキドキさせないでほしかった。

……しかも、この状態からどう動いていいかわからない。

緊張と戸惑いで、フライパンを持っている手がふるふると震え出す。


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