週末シンデレラ
番外編SS:想いの返し方
コーヒーを飲んだあと、わたしたちはソファに並んで座り、ただテレビを見ていた。
流行の観光スポットやお店が紹介されると「今度はあそこへ行こう」と話したり、「あれが食べたい」と言ったり、たわいない話ばかりしていた。
帰りたくないなぁ……。
窓の外が茜色から紺色に染まり始めても、気づかぬふりをした。
「あ……もう、こんな時間か」
あーあ……征一郎さんが気づいちゃった。
明日は仕事だし、仕方ないとわかっていながらも肩を落とす。
ついに「家まで送ろうか」なんて言われるのだろうか。時計を確認した征一郎さんは腰をあげた。
「夜ご飯、どこかへ食べに行こうか」
「えっ?」
予想とは違う問いかけに、弾かれたように顔をあげる。征一郎さんを見ると、眼鏡の奥の瞳が穏やかに細められていた。
「そろそろ、いい時間かと思ったんだけど……お腹、空いてない?」
「あ……すっ、空いてます!」
なんだ……もう少し一緒にいられるんだ。
わたしが大きくうなずくと、征一郎さんはクスリと笑っていた。
車を走らせて十分。征一郎さんにご飯のお店を任せると、近くのお蕎麦屋へ案内してくれた。