週末シンデレラ
シーツ……できれば早めに洗ってほしいけど……いつ洗うか悩んでるんだ。
寝てないのは心配だけど、ベッドの前で真剣に悩んでいる征一郎さんを想像すると、おかしさが込み上げてきた。
「ふふ……っ」
「わ、笑うことじゃないだろう。こっちは真剣なんだ」
征一郎さんは少し拗ねた顔をして、壁のほうを向いてしまった。
会社でもこんな風に話せるのは嬉しい。仕事を真面目にすれば、ふたりきりのときくらいいいよね。
楽しさを噛みしめ、ふっと気がゆるむ。すると、エレベーターがまだ総務部に着いていないことに気づいた。
「なかなか着きませんね、総務部に……あれ? 階数表示が点灯してないですね」
「本当だな……あっ、エレベーターのボタン、押し忘れていたみたいだ。つい、ふたりきりだということに緊張してしまったようだ」
征一郎さんは自嘲気味に言って、総務部の階のボタンに指を伸ばす。しかし、それより早くエレベーターの扉が開いた。
「え? なんでおふたりが……?」
扉が開くと、目の前には上川くんが立っていた。一階で止まったままのエレベーターにわたしたちがいたので、目を丸くして驚いている。
乗り込むと営業部がある階のボタンを押し、怪訝な顔でこちらを見てきた。
「……もしかして、ボタン押し忘れていたんですか?」
「いや、べつに…………っ、なんでもない」
「そ、そうそう。なんでもないのよ」
征一郎さんがうっかり変なことを言ってしまうのかと思ったけれど、とどまってくれたことにホッとする。
だけど上川くんはわたしたちのことを交互に見ると、はぁーっと大きく息をついた。
「エレベーター内でオフィスラブってたわけですね。……朝からごちそうさまです」
上川くんは肩をすくめると、営業部の階で降りていった。
残されたわたしたちは顔を真っ赤にしあったのだった。
【完】
*ちょっとオフィスラブ(?)させてみました!
読んでいただき、ありがとうございました*