週末シンデレラ


シーツ……できれば早めに洗ってほしいけど……いつ洗うか悩んでるんだ。

寝てないのは心配だけど、ベッドの前で真剣に悩んでいる征一郎さんを想像すると、おかしさが込み上げてきた。

「ふふ……っ」
「わ、笑うことじゃないだろう。こっちは真剣なんだ」

征一郎さんは少し拗ねた顔をして、壁のほうを向いてしまった。

会社でもこんな風に話せるのは嬉しい。仕事を真面目にすれば、ふたりきりのときくらいいいよね。

楽しさを噛みしめ、ふっと気がゆるむ。すると、エレベーターがまだ総務部に着いていないことに気づいた。

「なかなか着きませんね、総務部に……あれ? 階数表示が点灯してないですね」
「本当だな……あっ、エレベーターのボタン、押し忘れていたみたいだ。つい、ふたりきりだということに緊張してしまったようだ」

征一郎さんは自嘲気味に言って、総務部の階のボタンに指を伸ばす。しかし、それより早くエレベーターの扉が開いた。

「え? なんでおふたりが……?」

扉が開くと、目の前には上川くんが立っていた。一階で止まったままのエレベーターにわたしたちがいたので、目を丸くして驚いている。

乗り込むと営業部がある階のボタンを押し、怪訝な顔でこちらを見てきた。

「……もしかして、ボタン押し忘れていたんですか?」
「いや、べつに…………っ、なんでもない」
「そ、そうそう。なんでもないのよ」

征一郎さんがうっかり変なことを言ってしまうのかと思ったけれど、とどまってくれたことにホッとする。

だけど上川くんはわたしたちのことを交互に見ると、はぁーっと大きく息をついた。

「エレベーター内でオフィスラブってたわけですね。……朝からごちそうさまです」

上川くんは肩をすくめると、営業部の階で降りていった。

残されたわたしたちは顔を真っ赤にしあったのだった。


【完】


*ちょっとオフィスラブ(?)させてみました!
読んでいただき、ありがとうございました*

< 240 / 240 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:705

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
  • 書籍化作品
[原題]お試し愛

総文字数/78,617

恋愛(純愛)123ページ

表紙を見る
クールな社長の耽溺ジェラシー
  • 書籍化作品
[原題]クールな社長とロマンスはじめました!

総文字数/111,596

恋愛(純愛)172ページ

表紙を見る
【ベリーズ男子・全話購入者特典】キミは許婚

総文字数/12,516

恋愛(その他)14ページ

表紙を見る

書籍化作品

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop