週末シンデレラ


明日のことを考えながら事務室へ戻ると、わたしが所属している総務部の休憩時間がちょうど終わるころだった。

営業部や企画部、システム部などの外回りや会議が多い部署とは違い、時間が固定的である事務系は、部署ごとに休憩をとる時間が決まっている。

ただ、昼休みに電話がかかってきたときに対応する人がいるので、部内で必ずひとりは電話当番として残ることになっていた。

「うわー……係長、もうお昼から帰って来てる」

美穂は小さな悲鳴をあげながら、経理課にある自席へそろりそろりと戻っていった。

総務部はわたしがいる総務課と、美穂がいる経理課のふたつで構成されている。

総務課は、電話当番の人以外はまだ誰もいないけど、経理課はすでに係長である都筑征一郎(つづきせいいちろう)さまが仕事を始めていた。もちろん、彼は電話当番ではない。

切れ長の目にノンフレームの眼鏡をかけた目はいかにも冷徹そうで、筋の通った鼻梁に上品な唇をした顔は、整いすぎていて彫像のようだといつも思っていた。

さらりと流した色素の薄い髪と、細身のスーツを着こなすスマートな体型はモデルのようで、パッと見はすごくモテそう。

しかも入社八年目の三十歳で係長、そろそろ課長代理に……なんていう噂もあるほど仕事ができる人。だけど、名前に“さま”なんてつけて皮肉りたくなるほど、口を開けば辛辣なことしか言わない。

それでも、そういう厳しさが総務部には必要だったりするんだよなぁ。……わたしは苦手だけど。


< 3 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop