週末シンデレラ
都筑係長に指定されたコーヒーショップは、改札を出て五分ほど歩いたところにある、チェーン店だった。
店内は狭く、多くの人で溢れている。
満席かと思っていたが、奥のほうに空いているふたり掛けのテーブルを見つけ、アイスコーヒーを注文して受け取ってから腰をおろした。
ヒールの靴を脱ぎ、足を休める。冷たいコーヒーを飲むと、ホッと肩の力が抜けた。
「係長、どこ行ったんだろう……」
それからしばらく待ってみたけれど、係長はいっこうに姿を現さない。
スマートフォンに表示されている時計を見ると、あれから三十分近く経とうとしていた。
待っていてと言った係長が、さきに帰るとは思えない。
もしかすると奥の席だから、わたしがここに座っているのがわからないのかも。
椅子から腰をあげ、店の入り口のほうへ目を凝らしていると……。
「あ、都筑さんっ」
係長が息を切らしながら現れた。
「悪い、随分と待たせてしまった」
なにやらノートパソコンくらいの大きさで、厚みのあるデパートの紙袋と、コンビニのビニール袋を持っている。
係長はコーヒーを注文することなくわたしに歩み寄ると、その紙袋をズイと差し出してきた。