週末シンデレラ
「気休めにはなるだろう」
そう言って取り出したのは、湿布と絆創膏だった。
「わざわざ、そんなものまで……」
「早急に手当てをしておいたほうがいいと思って。ちょっと見せてもえるかな」
「え……っ、あの……」
係長はその場にひざをついてしゃがみ込むと、靴を脱いでいるわたしの足に触れた。
そして、ひねって腫れている足首と、靴擦れした踵をじっと見つめる。
係長に足を見られるなんて恥ずかしい……。手入れしていないし、夏だから汗ばんでいるし……。
それに、王子が姫にひざまずくような光景を、周りの人が不思議そうに見つめてくるのも恥ずかしかった。
「あの、都筑さん。周りの人たちが見ていますし……手当ては自分でできますから」
「きみは周りの目より、自分の症状を心配したほうがいいんじゃないか。……かなり、痛そうだ」
係長は顔をしかめ、湿布の箱を開けた。やはり、このまま係長が手当てをしてくれるらしい。
腫れて熱を持っている足首に、ひんやりとした湿布と係長の長い指先が触れた。くすぐったさに、思わず声が漏れそうになる。
「んっ……」
声を堪えようと下唇を噛んだけれど、結局小さな嬌声を漏らしてしまった。
「へ、変な声は出すなっ……手当をしているんだから」
「す、すみません……っ」
怒気をはらんだ声に、肩をすくませて謝る。チラリと係長を見ると、耳が赤くなっていた。
「ふふ……」
「なにがおかしい」
「あっ、ごめんなさい」
つい笑ってしまい、慌てて口を押さえる。もう一度見た係長の耳は、さきほどよりももっと赤くなっていた。