週末シンデレラ
「それに、俺と長く一緒にいると、女性はあまり笑わなくなる。身体を強張らせるというか、緊張しているというか……。一也に言わせると、俺が難しい顔をしているかららしいんだが、自分ではよくわからない」
「都筑さん、黙っていたら怒っているように見えますから。ちょっと……威圧感もありますし」
真面目な性格が顔に現れているので、きっと係長のこんな素顔を知らない女性は、なにかひとつ行動をとるにしてもビクビクしてしまうと思う。
図々しいと思われているなら、言いたいことを言ってしまおうと半ばやけくそになって印象を伝えると、係長はまたおかしそうに笑った。
「らしいな。けど、無意識だからどうしようもない。それでも、カオリさんはそんなことを気にせず、楽しそうに笑うし、俺に怒りもする。新鮮だったんだよ」
どうやら、わたしを褒めてくれていて、自分には笑えないと思っているようだけど、コーヒーを飲む都筑さんの口元も、さきほどからほころんだままだ。
「……都筑さんも、今は楽しそうな顔をしていますよ」
「なっ……そんなはずない」
係長は眉を寄せてムッと怖い表情になると、顔を背けて耳を隠した。
たとえ耳が見えなくても、そんな仕草をとれば照れているのがわかるというのに。
「都筑さん、せっかく笑えていたのにダメですよ。もっと肩の力を抜いて、寄せた眉は離して……。そうしたら、部下も楽しく仕事ができますし、わたしも……っと」
わたしも仕事がしやすい……なんて、危うく言ってしまうところだった。