週末シンデレラ


間一髪で口をつぐむと、係長は怪訝な顔つきで、わたしを覗き込んできた。

「きみは透視ができるのか?」
「と、とうし?」
「部下が俺に怯えていると、どうしてわかったんだ」
「それは、都筑さんの話を聞いていて思っただけです。わたしにも似たような上司がいますし」

さすがに「怯えている」とまでは言わなかったけれど、係長は自分で気づいていたようだ。

しかし、目の前にいる女が、同じ総務部の人間であることには、いまだに気づいていない。

わたしの話を聞き、係長は納得したようにうなずいた。

「そうだ、俺に似た上司がいるんだったな。だからか……」
「はい。だから、都筑さんの職場での様子が想像ついたんです」
「いや、それもそうだけど……だから、俺みたいな愛想のない奴に慣れているのかと思って」

係長は自嘲気味に笑った。

愛想がない、冷徹そう――たしかに、係長のことをずっとそう思っていた。

だけど今は、もっと早くから彼のことをちゃんと見ればよかったと後悔している。

そうすれば、“サトウカオリ”としてではなく“加藤詩織”として、こうして向き合えていたかもしれないのだ。


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