週末シンデレラ
それからしばらくすると、コーヒーショップの閉店時間となり、わたしと係長は店を出た。
あの店の閉店時間は二十三時。飲み会で二時間の我慢だと言っていたのに、三時間近くふたりきりで話していたなんて、信じられない。
「では、こっちのホームなので。本当に、ありがとうございました」
さきほど落ちかけた階段の前で立ち止まり、係長に頭をさげる。ホームへ向かって一歩踏み出すと、足が少しだけ重く感じた。
もしかして、係長と離れがたく思っているのだろうか。それでも、これ以上……関係を深めるわけにはいかない。
そう思い、足を進めていると。
「待ってくれないか」
「は、はい?」
背後から係長に呼び止められる。
わたしが戸惑いながら振り返ると、彼は階段をおりてきた。その表情は、珍しく余裕をなくしている。
「俺は……カオリさんに興味を持ってもらえないのかな?」
「興味?」
「俺と恋愛する気がないと言っていただろう。だから、連絡先も……教えてもらえないのだろうか」
「わ、わたしのですか?」
思わず自分を指差してたずねると、係長は呆れたように息をついた。