週末シンデレラ
「加藤さん、ちょっと手伝ってほしいんだけど」
「あ、はい」
いつのまにか昼休みから戻ってきていた隣の席の武田さんに、鼻にかかった声で呼ばれる。少し嫌な予感がしつつも、彼女の方へ顔を向けた。
「この書類、半分お願いしていいかな?」
そう言って書類の束を半分に割り、それをわたしに差し出してきた。
嫌な予感は的中。たまにこうして武田さんに呼ばれると、彼女の仕事を押しつけられていた。
三年上の先輩だというのに、仕事のスピードが二年目のわたしより遅い。原因は隠れてネットをしたり、休憩と言って給湯室でよく他の社員と話したりしているからだろうけど。
「で……でも、これ」
「ごめんね、わかってるのよ。すでに加藤さんが半分やってくれていることは。でもね、わたし……こんなに仕事抱えてて」
言葉をわたしの語尾にかぶせ、武田さんは自身のデスクを見せてくる。その両脇には書類がたくさん積まれていた。
「わかりました。では、半分……」
あまり気は進まないけれど、確かに忙しそうだからここは持ちつ持たれつ。
それに、明日は土曜日。わたしにもついに春がやってくるかもしれないということで、ちょっぴり気分がよかった。
「加藤さん、頼まれてほしいことがあるんだけど」
受け取った書類をパラパラと確認し、デスクに積み重ねていると、今度は昼休みから戻ってきたばかりの総務課長に呼ばれる。
「はっ、はい」
今度はなんだろうと思いながら課長の席まで行くと、バサリと書類の束を渡された。
「これを今日中によろしく」
「え?」
「武田さんに頼もうかと思ったけど……彼女、忙しそうだから」
「わ、わかりました……」
わたしの重たい返事なんて、課長には聞こえていないらしい。
誰かがやらなくちゃいけない仕事。だけど……さっき武田さんから受けた書類と合わせると、トータルでわたしのほうが忙しいことになる。
うまく押しつけられてしまった……。