週末シンデレラ
なんて、気づいたときにはすでに遅かった。
わたしはあれから必死に仕事をこなしたけれど、定時を一時間すぎても自分のデスクから離れられないまま。
それに対して、書類を山積みにしていたはずの武田さんは、メイク直しをして帰って行く。
ありえない。ありえないけど、前に一度たてついた時。
『加藤さん、一度引き受けた仕事は最後までして当然よ』
と、悪びれもなくサラリと言われてしまったのだ。そのことがあるので、今日もとてもじゃないけど言う気になれない。
「詩織、まだ終わってないの?」
「み、美穂っ」
昼休みに怒られていた美穂は、もう帰れるらしい。仕事ができる都筑係長は、部下への仕事の割り振りも上手なようだ。
「あー……武田さんに押しつけられたんだ。今日、営業部と飲み会だって言ってたもんね」
わたしのデスクを見た美穂は、同情してくれているのか、渋い顔をした。
わたしたちが勤めている情報機器メーカーは国内では一、二位を争う大手で、この自社ビルにはたくさんの部や課が存在している。その中でも、営業部にはイケメンが多い。
狙う女子がたくさんいるうえに、営業部には社交的な人が多いので、飲み会が結構な頻度で開かれているらしい。わたしは縁がなくて、一度も参加したことがないけれど。