週末シンデレラ
次の日。目の下にクマを作りながら出勤すると、隣の席の武田さんは元気いっぱいで同僚と話をしていた。
「おはようございます」
わたしが席につくと、武田さんは話をやめて、こちらに申し訳なさそうな顔を向けてきた。
「おはよう、加藤さん。昨日はごめんね、給料が残っていたんでしょう。デスクを見たら計算書がなくなっていて、ビックリしちゃった。ありがとう」
「いえ……お元気になられたみたいで、よかったです」
本当に武田さんの体調が悪かったのかどうかはわからないけれど、昨日は寝付くまで都筑係長のことで頭がいっぱいだったので、彼女に対する腹立たしさは薄れていた。
かわいかったな……耳を赤くしている、都筑係長。
昨日の帰りのことを思い出し、ひとりでニヤついてしまう。すると、係長がこちらに歩み寄ってきた。
まさか、なにをニヤニヤしているんだ……とか、注意されるのかな。
わたしは慌てて口元を引き締めたが、係長は武田さんの横で足を止めた。