週末シンデレラ


次の日。目の下にクマを作りながら出勤すると、隣の席の武田さんは元気いっぱいで同僚と話をしていた。

「おはようございます」

わたしが席につくと、武田さんは話をやめて、こちらに申し訳なさそうな顔を向けてきた。

「おはよう、加藤さん。昨日はごめんね、給料が残っていたんでしょう。デスクを見たら計算書がなくなっていて、ビックリしちゃった。ありがとう」
「いえ……お元気になられたみたいで、よかったです」

本当に武田さんの体調が悪かったのかどうかはわからないけれど、昨日は寝付くまで都筑係長のことで頭がいっぱいだったので、彼女に対する腹立たしさは薄れていた。

かわいかったな……耳を赤くしている、都筑係長。

昨日の帰りのことを思い出し、ひとりでニヤついてしまう。すると、係長がこちらに歩み寄ってきた。

まさか、なにをニヤニヤしているんだ……とか、注意されるのかな。

わたしは慌てて口元を引き締めたが、係長は武田さんの横で足を止めた。


< 63 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop