週末シンデレラ
「武田さん、もう体調はいいのか?」
「はっ、はい、元気になりました。ありがとうございます」
係長の言葉に、武田さんは驚きながらも、嬉しそうに顔をほころばせた。
……都筑係長が、武田さんの体調を気遣っている。
今まで部下が休んでも、気遣っている姿を見たことがなかった。しかも、今回は同じ総務部とはいえ、課が違う。
なのに、なんで武田さんを……。
喜んでいる武田さんとは対照的に、わたしの気持ちは落ち込んでいく。しかし。
「体調が戻ったならよかった。武田さんが休んでいたときの仕事は、加藤さんがすべてしてくれたから、彼女にちゃんとお礼を言うように」
「……つ、都筑係長?」
係長はそれだけ言うと、自分の席に戻って仕事をはじめた。
残された武田さんは目を瞬かせ、不思議そうに首をひねる。
「都筑係長って、なにかあったの? 性格、変わったみたいだけど」
「さ、さぁ……どうしたんでしょうね」
わたしは再びニヤついてしまいそうな口元を、しっかりと引きしめたのだった。