週末シンデレラ
「明日会う人が、営業部の人よりかっこいい男の人でありますようにっ」
仕事を押しつけられて、飲み会へ行かれたことが悔しくて、思わず願ってしまう。そんなわたしを見て、美穂はクスリと笑った。
「わたしもいい人があらわれるよう、願っておくわ。じゃあ、お疲れさま」
「ありがとう。お疲れさま」
肩をポンッとたたいて帰っていく美穂に、笑顔で手を振って見送る。
「はぁー……」
彼女の姿が見えなくなると、わたしはため息をひとつ零した。
総務課はわたし以外帰ってしまった。同じフロアにある監理部も全員帰っている。……だけど経理課には一人、カタカタとキーボードをたたき続けている人がいる。
都筑係長……。
フロアに残っているのは、わたしと都筑係長だけになってしまった。
今、自分がこなしている仕事は経理課とは関係のないもの。
だから、どんなに仕事が遅れようと、怒られることはないとわかっているのに、妙に緊張してしまう。
昼間と同じように、パソコンの横から係長を覗く。背筋はまっすぐに伸びたまま、眼鏡の奥にある瞳はパソコンの画面しか見ていない。