週末シンデレラ
今日は「NO残業デー」だし、定時に帰れると思っていた。
なのに、なぜかわたしは定時を一時間過ぎてもパソコンの前で仕事をしていた。
武田さんから仕事を渡されたというのもあるけれど、自分もミスをしてしまい、しかも明日までに仕上げなくちゃいけないものだった。
ひとりで残るのって……結構寂しい……。
誰もいなくなり、静まり返った事務室を見る。
鍵に関しては、警備会社の人が管理してくれているので気にする必要がなく、部長や総務課長は「ご苦労さま」とだけ言って、帰ってしまった。
いつもなら都筑係長が残ることが多いけど、今日は水曜日だし、残業してまで片づける仕事がないのか、定時には席を立っていた。
ちょっと息抜きでも……。
少し集中力が切れてきたので、バッグからスマホを取り出し、麻子から返事がきていないか確認する。お店が忙しいのか、返信はなかった。
そのままデスクにスマホを置き、仕事を再開した。
あと、少しで終わるかな……。
仕事の終わりが見えてきたとき、事務室のドアが開いた。
「お疲れさまです……あ、加藤さん」
誰が来たのかと声のほうを見ると、営業部の新入社員である、上川出流(かみかわいずる)くんがドアの隙間から顔を覗かせていた。