週末シンデレラ
「いいけど、次からは気をつけてね」
「わかりました。でも、加藤さんがいてくれてホントによかった」
わたしの返事を聞いた上川くんは大きく息をついた。
「大袈裟だなぁ……わたしじゃなくても、他の人も作ってたと思うよ」
なんせ、上川くんのお願いだから。
いくら年上しか狙っていない武田さんでも、彼に上目遣いで見つめられたら、なんでも言うことを聞いてしまうはず。
「いえいえ、先輩が総務課の人に頼んだときは嫌な顔されたらしくって。でも、加藤さんは優しいから、そんなことないと思っていたんです」
「優しいって……どうして……あっ」
確信をもっているように「優しい」と言ってくれる上川くんに、その理由をたずねようとしたら、デスクに置いていたスマホが震えだした。
「彼氏さんですか?」
上川くんがメールを受信したスマホを見て、ニヤリと笑う。
「ち、違うよ……友達」
たぶん、麻子からだと思う。しかし、上川くんはそれを信じてくれない。
「隠さなくてもいいですよ。加藤さんに彼氏がいないほうがおかしいですから。それでは、名刺は明日の昼前に取りに伺います。ありがとうございました」
いないほうがおかしいって……わたしに? いたほうがおかしいんじゃないの?
たとえお世辞だとしても、気分はよかった。