週末シンデレラ
街の風景を楽しみながら、係長について歩いていると、映画館の前で立ち止まった。
「今日は、映画でも見ようかと思うんだけど、どうかな?」
「はい。今はなにをやっているんでしょうね」
映画館に入り、上映中のものを確認する。王道のラブストーリーやドラマから派生した刑事もの、海外のアニメなどがやっていた。
「あっ……これ、見たかったんだ」
その中に、最近原作を読んだばかりのバイオレンス・ミステリーを見つけた。
係長と恋愛ものは気恥ずかしくて見づらいけど、これならラブシーンはないはずだし、男の人も楽しめそうだ。
でも、係長にも見たいものがあったのかも……。
「ど、どうでしょうか?」
つい「見たかった」と、口走ってしまったことを後悔し、そっと上目でたずねる。
すると、係長はポカンと口を開けていた。
「いや、俺はいいが……カオリさんはそれがいいのか? 恋愛ものもあるようだけど」
「はい。この映画は前から気になっていたので」
わたしの返事を聞いた係長は、目を瞬かせたあと、フッと軽く笑った。