週末シンデレラ


街の風景を楽しみながら、係長について歩いていると、映画館の前で立ち止まった。

「今日は、映画でも見ようかと思うんだけど、どうかな?」
「はい。今はなにをやっているんでしょうね」

映画館に入り、上映中のものを確認する。王道のラブストーリーやドラマから派生した刑事もの、海外のアニメなどがやっていた。

「あっ……これ、見たかったんだ」

その中に、最近原作を読んだばかりのバイオレンス・ミステリーを見つけた。

係長と恋愛ものは気恥ずかしくて見づらいけど、これならラブシーンはないはずだし、男の人も楽しめそうだ。

でも、係長にも見たいものがあったのかも……。

「ど、どうでしょうか?」

つい「見たかった」と、口走ってしまったことを後悔し、そっと上目でたずねる。

すると、係長はポカンと口を開けていた。

「いや、俺はいいが……カオリさんはそれがいいのか? 恋愛ものもあるようだけど」
「はい。この映画は前から気になっていたので」

わたしの返事を聞いた係長は、目を瞬かせたあと、フッと軽く笑った。


< 79 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop