週末シンデレラ
「よく予約が取れましたね」
席に着き、ディナーコースを注文してひと息つく。まだ十八時半だというのに、店内は満席だった。
「ああ、じつはネットでこの店を見つけたあと、一也に相談したんだ。そうしたら、知り合いが店にいるからと言って、予約を融通してくれた」
「じゃあ、一也さんに感謝ですね。あ、前菜がきた……美味しそう」
運ばれてきた前菜は、色鮮やかな野菜やタコのカルパッチョ、魚介のムースなどがひと口ほどの大きさで、一枚の皿に盛られている。
「食べるのがもったいないくらい。あー……でも、いただきますっ」
わたしはぎこちない手つきでナイフとフォークを使い、カルパッチョを頬張った。
爽やかな酸味がふわりと口内に広がる。食べたことがない味に自然と頬が綻んだ。
「んー……幸せぇ……」
思わず口から感想が漏れる。
気がつくと向かいに座っていた係長は、料理にはいっさい手をつけておらず、わたしのことをじっと見つめていた。