週末シンデレラ
* * *
週が明けた月曜日。
今回も係長にバレなかったとはいえ、嘘をついた罪悪感だけは残った。
先週の月曜日は、見てはいけないものを見てしまったような気持ちと、バレるんじゃないかという落ち着かない気持ちで気まずかったけれど、今日はちょっと違う。
「気が重たい……」
会いたいと思い、衝動をこらえられずに会うことを選んだのは自分。そして、会うなら嘘をつき通すことが正しいと思った。
なのに、まさか係長に惹かれて、嘘をつくことが苦しくなるなんて。
係長が自分のことを“加藤詩織”ではなく“サトウカオリ”として見ている。
だけどそれは、わたしであって、わたしではない。
本当のことを話せないし、自分から係長を遠ざけるのはやっぱり気がとがめる。
どうしようもない、苛立ちに似たもどかしさだけがつのっていた。
正しいと思ってついた嘘は、間違っていたのだろうか……。
鉛のように重たくなった身体を引きずり、スッピンに黒縁眼鏡をかけて出勤する。
会社のエントランスへ入ると、エレベーターの前には多くの社員がいた。