週末シンデレラ


わたしもエレベーターへ乗るために、ぼうっとしたままそこへ立つ。すると。

「おはようございます」

隣から声をかけられ、目が覚めたようにハッとする。明るい声の主を見ると、上川くんがにっこりと笑っていた。

「上川くん、おはよう」
「大丈夫ですか? なんか、元気がないように見えましたけど」
「大丈夫。休み明けで身体がシャキッとしないだけだから」

エレベーターが到着したので、わたしと上川くんは他の人と一緒に乗り込んだ。

集まっていた社員が乗り込むと、エレベーターはすぐに満員となり、身動きを取ることさえ難しい状態となる。

それでも、上司や同僚を見つけると朝の挨拶を交わすのは、サラリーマンの職業病だろう。

「加藤さん、この間はありがとうございました」

身体が触れ合うほどの距離で立っていた上川くんが、階数の表示板を見ながら口を開く。

エレベーターは一階あがることに止まり、一、二人が降りていくだけだった。

まだ時間がかかりそうだし、誰かと話しているほうが係長のことを考えなくてすむ。


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