週末シンデレラ
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土曜日。
わたしはいつもかけている黒縁眼鏡を取り、先日初めてつくったコンタクトレンズを入れて、高校からの友達である麻子(あさこ)の家にお邪魔していた。
麻子は、彼女の職場である美容院の近くにワンルームを借りている。
麻子自身も小顔にマニッシュショートが似合っていてかわいいけれど、部屋もクラシック調の白い家具で揃えられていて、女の子らしくてかわいい。
その中でも麻子がお気に入りだという猫足の鏡台には、色とりどりのマニキュアやグロス、アイシャドウなどが並べられている。
わたしはその椅子に座らせてもらい、麻子にメイクをしてもらっていた。
特別な予約があるときは髪のセットだけではなくメイクも担当するらしい麻子は、中腰のまま、手慣れた様子でいろんなアイテムを駆使していく。
わたしはただ座って、彼女にすべてを任せるだけだった。
「経理課の係長なんて、わたしみたいな平社員が残るのは、電気代の無駄だって言うのよ。腹立つでしょ?」
麻子がメイクをしてくれている最中、わたしはずっと仕事の愚痴を言っていた。
先輩の武田さんから仕事を押しつけられたことだけではなく、もれなく都筑係長のことまで。
麻子はそれに共感するでもなく、反感を持つでもなく、適当にあいづちを打って聞き流してくれていた。
吐き出すだけで満足するわたしには、それくらいがちょうどよかった。