週末シンデレラ
三章:揺らぐ決意
それから二週間、都筑係長からの連絡はなかった。
カレンダーは八月から九月へ変わり、デパートは秋ものを並べだした。それでもまだ、街を歩く人は夏の装い。
わたしも、九月になったし節電のために冷房をやめようと思っていたけれど、蒸し暑さに負けてスイッチを入れてしまった。
「あ、メールが届いてる」
リモコンをローテーブルに戻すと、その近くに置いていたスマートフォンがメールを受信していた。
わずかに期待してしまい、胸がドキリと震える。確認すると、係長からの二度目のお誘いだった。
『今週の水曜日、食事でもどうだろうか?』
メール自体、久しぶりだった。おそらく今月末から社員旅行があるので、取りまとめである経理課は忙しかったのだろう。
社員旅行は毎年、九月末から十月末にかけて、土日の一泊二日で行われる。
社員全員が一度にでかけるのは宿泊先を見つけるのも大変なので、いくつかの部が合同で、海や山やテーマパークへとでかけていた。
今回、総務部は営業部と一緒だった。どの部と合同になろうとも、係長と一緒の旅行になることには変わりがない。
それに、彼と一緒だからといって、なにかあるわけでもないけれど。