週末シンデレラ


「返事……どうしよう」

忙しい中、暇を見つけて誘ってくれることは、飛び上がりたいくらい嬉しい。

誘われることを期待していた自分もいた。けれど、会いたいという気持ちだけで“カオリ”になることは、辛くなるだけだと知っている。

これ以上、ずるずると会っていても、お互いに離れがたくなってしまうだけ……。

『ごめんなさい。もうお会いすることができません』

メールを作成し、送信ボタンを押そうとするが、指が震える。

『予定がある』と言って、断るのとは違う。『もう会えない』ということは『あなたを好きじゃない』と言っているようなものだ。

理由を聞かれるだろうか。そうしたら、なんて言えばいいんだろう。いっそ、このまま無視したほうが……。

一時間くらい悩んだあと、結局そのままの文面で送ることにした。

理由を聞かれたら『好きな人ができた』と言えばいい。それに、無視をしたら、一也さんや麻子に迷惑をかけるかもしれない。

……送ってしまった。

送信中の画面を見て、息をつく。係長からは、珍しく間をおかずに返信がきた。


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