週末シンデレラ


「だ、大丈夫だ……」

片ひざをついて起き上がる係長のそばには、ゴミ箱が転がっていた。

美穂が足元に置いていたゴミ箱に、係長はつまずいたようだ。

こんなことよくあることだし、わたしなんてなにもないところで転ぶこともある。

だけど、係長のドジな姿を見たことがない総務部は、みんな目を丸くしていた。

「すまない」

係長は小声で美穂に謝ると、彼女のゴミ箱を直し、自身についたホコリを払って席へ戻った。

どうしたんだろう……珍しい。

チラリと様子をうかがうけれど、やっぱり変わったところはないように見える。

そして、それからはあまり席を立つことがなく、ただ仕事をこなしているように見えた。だけど……。

「今日の都筑係長、危なっかしいんだよねぇ」

昼休みの食堂で、美穂が不安げに零す。

食堂はざわついていて、隣の席も空いているので、会話の内容に気をつけなくても大丈夫そうだ。


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