週末シンデレラ
「じつは昨日、『水曜日に食事はどうか』って誘われて……だけど、『もう会えない』って、返信したの」
「あー……それで、係長はショックを受けて、落ち込んでるわけね」
美穂は納得したとばかりに、何度もうなずく。
「落ち込んでるのかな? メールでは『わかった』って、あっさり引いたけど」
「それは強がりなんじゃないの。もともと不器用な人なんでしょ?」
「うん……」
美穂の言葉に小さくうなずく。
わたしが原因で動揺してくれているのなら、係長の中に私が存在していた意味があったようで少し嬉しい。
だけど、それと同時に、苦しんでいる姿を見るのはやっぱり辛くて、複雑な感情で胸が締めつけられる。
「わたしが、係長を元気にできたらいいのに……」
それができないから歯がゆい。係長を元気にできるのは“サトウカオリ”であって、“加藤詩織”じゃないから。
「詩織……」
美穂は優しく見つめてくるだけで、それ以上なにも言わない。
ふたりで黙り込んでいると、誰かがわたしたちのそばで立ち止まった。