白狐のアリア
 それもそのはず、今日は各地の大妖怪が見える日。会合と呼ばれる日である。

 数多の妖怪――百鬼を従える、大妖怪の中の大妖怪のみが出席することを許される会合。

 そんな場に、藻女のようなまだ妖力も少ない幼い娘がいるのは、ひどく目を引いた。

 事実、初めて彼女がこの場に来たとき、幾人もの大妖怪が異を唱えた。だが、今では誰もそんなことを言わない。彼女の存在を黙認する。

 何故百鬼を従える程の力を持つ、選ばれし大妖怪ともあろう者達が、黙って見過ごすのか。

 理由は簡単。異を唱えた彼らを圧倒的な力で捩じ伏せた存在が、目の前にいるからである。

 藻女に手を引かれながら歩いてきた青年を、犬神は目を細めて見やる。

 青年は、彼の長年の友であった。目が合うと、青年がニヤリと口角をあげた。


「久しぶりだな、白火」
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