―彼氏と彼女―




「もう!」って怒るそぶりで笑う彼女に、俺は、いつも惑わされて。



 そんな俺の欲情に気付かない彼女は、緩く巻かれた髪を耳にかけながら「これはね」と二度目の説明を始めた。


 静かな図書館は俺達以外で数人しかいなくて。
 彼女の可愛い声が良く響く。




「……今度は解った?」


 言って、俺の顔をのぞき込む彼女の瞳に、俺の心臓は一瞬で早鐘を打つ。


 ……が、そんなそぶりは見せないように

「解りやすかった。ありがとな」

 俺が笑顔でお礼を言うと、今度は隠しきれないように彼女は顔を赤くする。



 正直、視線が鬱陶しいだけのこの顔を好きになれなかった俺だったけど、彼女の反応を見る限り、この顔に生んでくれた母さんに感謝だ。

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