―彼氏と彼女―
小高い丘に立つこの図書館は、大きな窓から緑溢れる庭が見える。
しかも、大きな軒のおかげか、夏の強い日差しを遮り、窓際の席が心地いい。
八月に入ったばかりの今、陽が強い昼から出歩く物好きは少ないらしく、図書館はガランとしていてまるで別世界みたいだ。
ふと外を見ると、夏特有の分厚い雲が遠くに見え、窓の外の木々からはうるさく鳴く蝉の声が聞こえてきそうな景色。
俺がそんな事を思って見ていると、緩くシャツを引っ張られる。
誰だかは分かってるから「どうした?」と、顔を向けるのと同時に微笑んだ。
彼女は案の定、恥ずかしそうに俯いてから、
「少し休憩しない?」
言って、はにかんだ笑顔を見せる。
俺が「いいよ」と立ち上がると、軽く机を片づけて小走りで俺の元へ。
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