―彼氏と彼女―





「沙智には今まで言わなかったけど……俺の母さん、心臓悪くてずっと入院してんだ。

 今月に少し離れた病院に移るんだけど……」



 俺の説明を聞いていた沙智が、唇を震わせながら口を開いた。





「一緒に、行くの…?」



 その質問に頷いた俺を見た瞬間、沙智の瞳から大きな滴が零れ落ちた。




「沙智、でも」

「く、んの……」




 一歩近づいた俺の耳に届いた、沙智の言葉。






「――――鷹臣君のバカ!」






 ……これが、冒頭のやり取りだ。

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