―彼氏と彼女―




「絵里、いい加減やめてやれ」



 俺の背中を殴り続ける絵里を落ち着かせ、忠司は椅子に座った。


 ……説明不足ってなんだよ。



「絵里。 お前、誤解したまま沙智ちゃんに伝えただろ」


 泣いてる絵里を隣に座らせ優しく頭を撫でる忠司の言葉に、絵里は眉間にしわを寄せる。



「私が、誤解…?」

「そう。
 もしかして絵里は、鷹臣が母親と一緒にここからいなくなると思ってないか?」

「うん。 だって、さっきもタカ君そう言ってたし……誤解はないよ」

「鷹臣は入院の手続きが済むまでの間、ここから離れるだけだよ?

“ずっと”ではないんだよ?」

「え…っ」





「……マジかよ…」



 二人の会話を聞いて、俺はそんな言葉しか出なかった。


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