ずっと、傍に。【Side He】 完
でも、別れようとは思わなかった。
彼女が簡単に別れてくれるとは思わなかったし、何より面倒くさかった。
『捨てないから』
『本当…?』
『うん、本当』
そのときの彼女の笑顔は、ただただ疎ましく感じた。
わかってる。僕が一番悪い。
でも、鬱陶しいという気持ちは消えない。
「…由紀くん、この人とは、もう関わらないで?」
「…わかったよ」
ただの友達だって言ってんのに、という怒りは心の奥底に沈める。
サツキのアドレスを彼女の前で消してみせると、彼女はまた安心したように笑った。
…疎ましい。
「ねえ、由紀くん。由紀くんは私のものでしょう?」
「そうだね」
もう否定する元気すらない。
「ねえ、傍にいて」
「今もいるじゃん」
「違うの。…ずっと、私の傍に、いて……」
勿論、と乾いた声で答える。
僕の彼女は壊れてしまった。狂ってしまった。
そのきっかけを作ったのは、確かに僕で。
この狂った彼女は、永遠に僕に纏わり付くだろうという嫌な予感もする。
ならいっそ、いっそこのままで。
「……由紀くん、愛してる……」
僕も、という言葉は出なかった。