32回、好きって言うよ。
12.“お前”でも好きです。
『つばさ』
高くて可愛い、あの声が頭から離れない-……。
白くて小さい顔、大きくて黒目がちな瞳も。
ピンクの頬に、ぷるぷるの唇も、あたしより低い身長も、肩くらいまでの栗色の髪も。
全てが可愛かった 。
「はぁ……」
ベッドの上で溜め息を吐く。
今日はあれから、
「じゃああたし、帰りますね!」
って思いっ切りの作り笑顔をして帰ってきてしまった。
だって絶対、あたしは邪魔者だったし。
……ううん。
ただ見ていたくなかっただけだ。
可愛い彼女とカッコいい翼先輩はお似合いすぎて。
あの人、翼先輩の事“つばさ”って呼んだ。
早見くんでも翼先輩でも翼くんでもなくて、翼って。
…彼女……なのかもしれない。
彼女はいないって噂だけど、皆が知らないだけかもしれない。
…あんなにカッコいい人に、彼女がいない方がおかしいよね。
そうならそうと、言ってくれれば良かったのに。